
飲食店の閉店を決める目安
「このまま続けるべきか、それとも店を閉めるべきか」。飲食店の閉店を考え始めたときは、営業を続けられる条件と、撤退するときに必要な費用・期間を並べて確認することから始めましょう。
赤字が続いた月数や、特定の季節だけで閉店の時期を決めることはできません。
まだ結論が出ていなくても、賃貸借契約書の確認や、居抜きで引き継げる条件の相談は進められます。閉店後の届出や退去準備の全体像は、飲食店の閉店手続きガイドをご覧ください。
閉店・撤退を考えるときの5つの判断材料
1.売上と、実際に支払いに使えるお金を分けて見る
売上が立っていても、入金より先に家賃・仕入れ代・給与などの支払日が来ることがあります。通帳残高だけを見るのではなく、「いつ入金され、いつ何を支払うか」を日付順に書き出してください。
その際は、営業を続ける費用に加えて、営業終了後も発生する家賃や設備搬出・原状回復などの費用も確認します。金額が未確定の売却代金や、返還条件を確認していない保証金は、確実に使えるお金と分けて整理しましょう。
支払いの見通しが立たない場合は、売却先が決まるのを待たず、顧問税理士や取引金融機関などへ状況を伝えてください。返済や債務整理の判断が必要な場合は、その分野の専門家への相談も必要です。
2.改善策に「費用・担当者・確認日」があるか
「もう少し頑張る」を具体的な計画に置き換えます。例えば、営業時間の見直しなら、どの時間帯を変更するのか、売上・仕入れ・人件費がどう変わるのか、いつ実績を確認するのかを決めます。
新メニューや販促を試す場合も、追加費用と作業時間を書き出しましょう。改善後の売上予想だけでなく、期待した結果が出なかった場合の支払い予定と撤退準備も一緒に確認します。
追加で使える予算や判断日が決まらない状態なら、外部の経営相談を利用することも選択肢です。
3.オーナーと従業員が運営を続けられるか
利益が出ていても、責任者が不在になる、シフトが組めない、オーナーの負担が大きいといった理由で、現在の営業体制を続けにくくなることがあります。
「採用できれば続けられる」「自分が休まなければ回る」といった条件は、実現の見通しを確認してください。営業時間の短縮、休業日の変更、運営体制の見直しで対応できるかも含めて考えます。
売上だけでは判断しきれない点は、人手不足を背景に撤退を決めた焼肉店の事例も参考になります。
4.賃貸借契約の期限に、準備を間に合わせられるか
閉店する日と、家賃の支払いが終わる日は同じとは限りません。契約書や更新に関する書面を開き、解約予告期間、通知の方法、原状回復の範囲、保証金の精算条件を確認します。
契約更新が近い場合は、更新する場合と解約する場合の条件を管理会社に確認してください。通知期限を過ぎる前に、必要な準備を整理しましょう。具体的な確認箇所は、飲食店の解約通知と撤退スケジュールで説明しています。
5.店を引き継ぐ条件が整理できているか
居抜き売却を選択肢に入れるなら、残したい内装・厨房設備の一覧、所有者、故障や不具合、希望する引渡し日を整理します。
貸主・管理会社には、設備を残して引き渡せるか、次の借主の入居条件、必要な承諾や手続きを確認します。
査定額が出たことと、その金額で売却が成立することは別です。購入希望者、賃貸借の条件、設備の状態、引渡し日などが合意できるかを確認しましょう。準備する資料は、居抜き査定前のチェックリストにまとめています。
「今閉める場合」と「続ける場合」を同じ条件で比べる
比較するときは、両方の案で同じ確認日を決めます。その日までに発生する支払い、確定している入金、まだ見積もりが必要な費用を並べましょう。未確認の項目をゼロ円として扱わないようにしましょう。
迷ったときに埋める「継続・撤退」の比較表
通帳残高と入出金予定を確認し、同じ確認日で次の表を埋めます。金額が決まっていない項目は「0円」ではなく「未確認」とし、見積もりや確認の担当者・期限も決めてください。
資金繰り表を使った判断の考え方は、東京商工会議所の廃業判断に関する相談事例も参考になります。
| 確認する項目 | 営業を続ける場合 | 撤退する場合 |
|---|---|---|
| 判断を見直す日 | 改善策の結果を確認する日 | 解約通知・工事発注に間に合う日 |
| 確定している入金 | 売上入金などの金額・入金日 | 売却代金・保証金などの確定条件と入金日 |
| 期限が決まっている支払い | 家賃・仕入れ・給与・返済など | 契約終了までの賃料・精算・撤去など |
| 追加で必要な費用 | 販促・修繕・採用などの実施費用 | 原状回復・搬出・手数料などの見積額 |
| 未確認の項目 | 改善に必要な期間・担当者・効果判定 | 貸主承諾・引渡条件・売却不成立時の費用 |
| 確認日時点の現金残高見込み | 確定入金から支払いと追加費用を引く | 確定入金から撤退費用と支払いを引く |
どちらかの残高が不足する見込みなら、売却成立や追加融資を前提に先送りせず、資金不足が起きる前に取引金融機関・税理士など該当分野の相談先へ確認します。
営業を続ける場合に確認するもの
- 家賃、仕入れ、給与、光熱費などの支払額と支払日
- 改善策を実施するための追加費用と担当者
- 入金の予定と、その根拠になる予約・売上実績など
- 改善の効果を確認する日と、方針を見直す条件
- 改善しなかった場合にも必要になる撤退費用と準備期間
撤退する場合に確認するもの
- 契約終了までの家賃・共益費と、最終営業日までの運営費
- 原状回復、設備搬出、廃棄・処分などの見積もり
- 未払いの仕入れ代、給与、その他の契約精算
- 居抜き売却や設備買取の手数料、修繕などの負担条件
- 売却代金と保証金の入金条件・予定日
売却価格だけで「閉店で利益が出る」とは判断できません。関連費用を差し引いて手元に残る金額と、入出金の時期を確認してください。売却に伴う費用の確認には、居抜き売却の費用・手数料ガイドも使えます。
閉店準備では4つの日付を分けて考える
「何月に閉店したいか」だけでは、必要な準備を把握しにくくなります。次の4つの日付を、契約内容や関係者との調整状況と一緒に書き出しましょう。
- 最終営業日:お客様への営業を終える日。従業員・予約客・取引先への対応も整理します。
- 賃貸借契約の終了日:解約条件と通知期限を確認して決める日。自己判断で最終営業日と同じにしないようにします。
- 設備の搬出・原状回復を行う期間:工事が必要な場合の見積もり、発注、作業、確認に使う期間です。設備を残す場合は、その範囲を書面で整理します。
- 物件の引渡し日:鍵、残置物、設備の状態を関係者と確認して引き渡す日。居抜き売却では、設備の引渡し・代金支払いの条件とも整合させます。
解約通知の期限が近い場合は、査定結果が出るまで何もせず待つのではなく、契約確認と売却条件の相談を並行して進めます。通知の提出や設備の処分を実行する前に、どの選択肢が残るかを確認してください。
営業継続・居抜き売却・原状回復をどう比べるか
営業継続・立て直し
改善策を具体化でき、実施する人・予算・期間を確保できるかを確認します。過去に投じた金額だけを理由に続けるのではなく、これから必要なお金と体制を見て判断しましょう。
居抜き売却・設備を残した引継ぎ
内装や厨房設備を次の利用者へ引き継ぐ案です。工事や処分の負担が変わる可能性がありますが、貸主・管理会社の条件、買い手、設備の所有関係、期限の調整が必要です。売却が決まらなかった場合の退去方法も確認しておきます。
原状回復して返却
契約で求められる状態に戻して返す案です。工事範囲、見積もり、作業期間、完了確認の条件を整理します。居抜き売却を検討している場合も、返却に必要な費用と期間が分かると比較しやすくなります。
店舗を売る方法の違いは、店舗買取・居抜き売却・事業譲渡など4つの方法の比較で確認できます。
ラーメン店を経営されている方は、ラーメン店の閉店・撤退前に確認する費用と厨房設備もご覧ください。仕込み負担や麺ゆで機・ダクトなど、業態に合わせた確認項目を整理しています。
相談前に書き出すチェックリスト
資料をすべてそろえてから相談しようとすると、着手が遅れることがあります。次の項目を分かる範囲で書き出し、不明な点は「未確認」と記載してください。
- 現在の状態:閉店を迷っている/閉店を決めた/解約通知を提出した
- 悩んでいる理由:売上、資金繰り、人手不足、体調、契約更新、移転など
- 希望する時期:最終営業日・契約終了日・引渡し日の希望、変更できない期限
- 契約書の確認:解約予告、更新、原状回復、保証金、設備を残す条件
- 費用と支払い:直近の支払予定、撤退費用の見積もり、未確認の費用
- 設備の状態:自社所有・リース・レンタルの区別、故障、残したい物
- 連絡の希望:連絡可能な時間、店舗への電話・訪問の可否、誰に何を共有済みか
- 継続する場合の条件:試す改善策、必要な費用・人員、結果を確認する日
閉店を迷っているときは、何をどこへ相談するか
店舗の引継ぎや退去方法を比較したい場合は、店舗売却の相談先に、物件・設備・期限の条件を伝えます。店舗高値買取センターでは、閉店を決める前の段階から、居抜き売却の可能性や必要な確認事項をご相談いただけます。
営業を続ける方法も含めて相談したい場合は、公的な経営相談窓口も利用できます。よろず支援拠点は国が設置した経営相談窓口で、中小企業・小規模事業者などの相談に無料で対応しています。
お近くの拠点で受付方法を確認してください。
税金、雇用、借入返済、法的な整理が関わる場合は、顧問税理士、社会保険労務士、取引金融機関、弁護士など、内容に応じた相談先へ確認します。店舗の売却相談だけで、これらの問題がすべて解決するとは限りません。
閉店のタイミングでよくある質問
赤字が続いたら、すぐに閉店した方がよいですか?
赤字の期間だけでは判断できません。支払いに使えるお金、改善策の見通し、撤退費用、契約の期限を合わせて確認します。
支払いが難しくなる見込みがある場合は、売却が決まることを前提に先送りせず、早めに関係先へ相談してください。
繁忙期が終わるまで営業を続けた方がよいですか?
繁忙期の売上だけでなく、その期間の仕入れ・人件費・家賃などと、入金の時期を確認しましょう。繁忙期を待つことで解約通知や引渡しの期限に影響しないかも確認します。
すべての店舗に共通する「閉店に最適な月」はありません。
黒字でも撤退を検討してよいですか?
利益以外にも、人員体制、オーナーの負担、契約条件、次の事業への移行などの判断材料があります。営業を続ける条件と、店舗を引き継ぐ条件を整理し、関係者と相談しながら決めましょう。
まだ閉店を決めていなくても、相談できますか?
はい。相談時に「閉店するか検討中」とお伝えください。希望する時期、契約書の有無、残したい設備など、分かる範囲から整理できます。
従業員やお客様へ伝える前の場合は、店舗への連絡・訪問方法についても先に共有してください。
