自己資金がなくても飲食店は運転資金の融資を受けることは可能?
飲食店を経営するにあたり、金銭管理、経営管理の知識は必要不可欠です。独立開業するまで調理の技術や接客スキルなどを日々の努力で積み重ねてきたこととくらべると、経営のスキル、特にお金に関する勉強に多くの時間を割いた方は多くないと思います。
また開業にあたり、資金の借り入れや返済計画などを含めた「資金計画」は最も重要な作業です。今回は、飲食店の運転資金の融資について解説していきます。
飲食店の資金繰りが悪化する原因
飲食店を開業し、程なくして廃業に追い込まれる原因の多くは、「経営状態が悪化していることに気づくのが遅かった」もしくは「潰れるまで悪化していることに気づかなかった」という嘘のような本当の話です。資金繰りが厳しく融資を検討するに至る原因を以下で解説します。
キャッシュフローの理解がない
例えば、コロナ禍で急に営業ができなくなったことで、手元に入るはずの日々の収入がなくなり、ある日突然、支払いができなくなった飲食店が数多くありました。「自転車操業」という言葉通り、自転車を漕ぎ続けないと倒産してしまうような状況の中、足を怪我して自転車を漕げなくなった飲食店が多くありました。
また月々の収支として、黒字もしくはプラスマイナスゼロで経営できていたとしても、先月の売上金が当月の支払い前の時点で残っていない場合、「今日の売上を先月分の支払いに回して、なんとかやりくりしている状態」が起こります。
このような場合経営状態としては、完全にアラートが出ている状況です。しかし、キャッシュフローを理解していないと、その事実に気づくことができません。毎日現金で支払っている仕入れ代金など、日々の支払いとしてお金が動くものは問題にはなりませんが、月末締めの翌月末払いやクレジットカード払いの経費、締め日から2週間程度先に支払う給与などは、経費が発生してから支払いを迎えるまで長いタイムラグがあるため、これが自転車操業の状態を作り出すことに繋がります。
また1、2月に倒産するお店が多いのは、12月の売上が割と好調で、その経費の支払いが1、2月にやってくるにも関わらず1、2月がものすごく売上が悪く資金がショートすることが起因となっています。
支払いと入金のズレ
主に売掛金が多い店舗や仕入れ単価の高いお店は、黒字倒産にも十分気をつける必要があります。売掛金はクレジットカードでの売上がもっとも多いです。また売上発生から実際にお店にこの売上が入金されるまでかなり期間があったため、飲食店でも黒字倒産や資金がショートして一時金を借り入れるお店がよくありました。しかし、最近は、翌日には入金されるなど支払いスパンの短いクレジットカードがほとんどとなり、このようなパターンはあまり見ません。クレジットカード以外の売掛金は、請求書払いやツケと呼ばれるある程度、利用金額が貯まってきた頃の後払いです。これに関しても近年では減りましたが、お客さまの多くが法人顧客で、月度の定額提供をしているような飲食店は、これからも黒字倒産に十分気をつける必要があります。特に売上発生から入金されるまでが、2ヶ月以上の長い期間がある場合、それよりも短いスパンでやってくる経費の支払が事前に必要になることを把握する必要があります。
経費をかけすぎている状態
飲食店は、初期費用がかなり高い傾向にあります。特に、厨房機器や設備の投資が初期費用の多くを占め、高額になることが多いです。このような背景から、日々の営業で利益を出し、そこから初期費用の回収を完了して初めて黒字になります。そのため長期的な収支予測をして、最初にかけた経費の回収はいつまでに完了するのかをしっかりと決めることが重要となります。開業後日々の業務に追われ、損益計算書を定期的に確認するなど数字と向き合う時間を取り、習慣として月毎に数字と向き合う時間を作りましょう。
事業拡大の失敗
飲食業は、2店舗目の経営が一番難しいと話す経営者が多いです。飲食業でのスキルを積んできた人が独立した場合、自分の能力を主戦力として1店舗を切り盛りすることには非常に長けていますが、まったく目の届かないところで、完全に人に任せて2店舗目を運営するとなると、これまでとはまったく違うマネージメント力が必要になってきます。
また、事業の拡大を目指し、2店舗目を出店するということは、1店舗目が安定して黒字であることが多いですが、2店舗目が当面の間、赤字だった場合、1店舗目の黒字分を完全に消してしまうこともよくあることです。この状況が長く続くことはメンタル面でも影響が出てきます。1店舗目の創業にも大きな労力が必要になりますが、事業拡大を狙った2店舗目はそれと同じか、それ以上の労力と精神力が必要となるため、十分な運転資金を用意した上で始めるのが良いでしょう。
自己資金がなくても融資を受けることは可能かどうか
自己資金がない場合の融資について解説していきます。
自己資金がなく融資を受けるのはかなり難しい
飲食店は、自己資金がない状態で融資を受けることは非常に困難です。自己資金が全くない場合「すべ全て融資に頼って事業を始めようとしているのか?」と、自分の意思やと信念が見られない経営者と判断されてしまいます。そのため、毎月貯蓄をしてきたことや計画的に準備してきたことを開示できるように開業の数年前から貯蓄計画を立てて実行に移すことが重要です。
自己資金が少ない場合は初期費用をおさえる方法を視野に
自己資金をしっかり蓄えてから開業することが最善ですが、どうしても難しい場合や、急いで開業したい場合に備え、初期費用を抑える方法を紹介します。
移動店舗やキッチンカーの利用
移動店舗やキッチンカーを視野に入れてみましょう。また移動が可能な店舗は、保証金や仲介手数料がなく、初期費用を大きく抑えることができます。出店費用や場所代など営業日に応じた経費の支払いになるものの、一般的な店舗物件とは違い、自分の所有物なります。そのため、廃業するとしても、自分の資産として持ち出し、売却することが可能です。しかし、その場所で営業する権利が長期間保証されることはあまりなく、いつどうなるかわからない契約が多いため、細かく確認する必要があります。
居抜き物件を契約する
近年では、造作譲渡の取引に理解を示す大家さんも増えてきたことから、居抜き物件もかなり増えてきました。自分が必要としている設備・内装が概ね揃っており、大きくレイアウトを変更することが必要なければ、大きく設備投資費を抑えることができ、自己資金が少なくても開業できます。
しかし、契約して入居した後、やはりレイアウトを変更しないと厳しいという判断になった場合は、まず今ある内装を壊してから作り直すことになるため、スケルトン状態からの工事の2倍ほどの経費がかかることがあります。そのため事前の慎重な判断が求められます。
飲食店が運転資金の融資を受けられる金融機関
自己資金が足りず、知人からの借り入れも難しければ、金融機関に融資をお願いすることになります。
創業者にもやさしい政府系の金融機関
最初に借り入れを検討する金融機関としては「日本政策金融公庫」です。コロナ禍においても行政の政策の後押しもあり、多くの人が利用していた金融機関です。特に、初めての開業で資金が豊富ではない創業者や事業規模の小さい店舗でもフェアに審査してもらえることが多く、数多くの融資が実行されています。無担保で連帯保証人も不要なことが多く、事業計画書も比較的簡易です。以下に事業計画書の書き方等については詳しく記載していますので併せて読んでみて下さい。
飲食店の開業時の初期費用、運転資金の十分な確保は、その後の安定的な経営を支えることになり、なによりも経営者の精神的な安定を促すことになります。そのため「お金があるのなら借り入れはしないほうがいい」と安易に判断する方もいますが、融資をしてもらえるならば創業時にしてもらうことも視野に入れましょう。
いざ、資金がショートして経営が悪化している状態になってからでは借り入れることが難しくなり、検討の時間を十分に取ることができません。また融資を受けるには、これまでの信用が形となった自己資金が重要であり、十分な事業計画を示す必要があります。設備費用の抑制や事業計画の見直しで、必要な運転資金を確保できるようしっかりプランニングするようにしましょう。
◯会社概要
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