「店を売る」と言っても色々ある? 飲食店売却の種類を分かりやすく解説

 「飲食店を売る」と聞くと、どのようなイメージを持つでしょうか。
 「お店を誰かに売る」と聞くと、お店を建物ごと買い取ってもらうようなイメージがあるかもしれません。
 ですが実際には、飲食店の売却には売却するものの種類や規模によって、いくつかの方法があります。

 例えば、店舗の内装や厨房設備を次の出店者へ引き継ぐ「居抜き売却」。
 店名やレシピ、営業ノウハウなども含めて営業そのものを引き継ぐ「事業譲渡」。
 さらに、会社や複数の店舗、ブランドなどを引き継ぐ「M&A」という方法もあります。
 一方で、店舗としての売却が難しい場合には、厨房機器などの備品を個別に売却するケースもあります。

 つまり、「店を売る」といっても、何を引き継ぐのかによって方法は変わります。今回は、飲食店の代表的な売却方法について、それぞれの違いを整理してみます。


そもそも「店を売る」=建物を売ることではない

 まず知っておきたいのが、飲食店の多くは賃貸物件だということです。
 自分で建物を所有している場合は不動産そのものを売却することもありますが、賃貸店舗の場合、建物を勝手に売買することはできません。

 では、何を売るのでしょうか。
 それは例えば、

  • 厨房設備
  • 店舗の内装や造作
  • テーブルや椅子
  • 営業に必要な設備
  • 店舗のブランド
  • レシピや営業ノウハウ
  • 顧客や取引先との関係
  • 会社や事業そのもの

  などです。

  このように、「何に価値が残っているのか」によって、選択肢が変わってきます。
  今回は、規模の小さいものから順番に見ていきましょう。


① 設備売却|厨房機器などを個別に売る

  比較的分かりやすいのが、厨房機器や店舗設備を個別に売却する方法です。
  設備は例えば、

  • 冷蔵庫・冷凍庫
  • 製氷機
  • コンロ
  • 食洗機
  • 調理台
  • テーブル・椅子

 などを中古厨房機器の買取業者などへ売却します。
 「店舗として次の借主へ引き継ぐ」という形ではなく、設備そのものを売るイメージです。

 例えば、居抜きでの引き継ぎがまとまらなかった場合や、退去時にスケルトン状態へ戻す必要がある場合などに、選択肢になることがあります。

 ただし、設備の状態や年式によって価値は大きく変わります。

 また、造作として一括で引き継いでもらう場合と比べると、設備ごとに売却先を探す必要があるため、手間がかかるケースもあります。


② 居抜き売却|店舗の「営業できる状態」を引き継ぐ

 飲食店の売却で、比較的よく聞くのが「居抜き売却」です。居抜き売却とは、店舗の内装や厨房設備などを次の出店者へ引き継ぐ方法です。

 飲食店を新しく開業する場合、内装工事や厨房機器の購入などに大きな費用がかかります。そのため、すでに店舗として使える状態になっている物件には、「初期費用を抑えて出店したい」という需要があります。

 その需要と、閉店する側の「設備や内装を無駄にしたくない」という考えが合えば、居抜きでの引き継ぎにつながることがあります。

居抜き売却で注意したいこと

 ただし、居抜き売却は「店舗を自由に売買する」ことではありません。

 賃貸物件であれば、現在の貸主との契約があるため、造作を次の借主へ引き継ぐ場合にも、貸主の承諾などが必要になります。また、物件の業態制限や設備の状態、次の借主が希望する業態などによっても、引き継ぎが成立するかどうかは変わります。

 そのため、「閉店するから、とりあえず居抜きで売ればいい」というわけではありません。貸主の許可がないまま自分で次の借り手を探すのではなく、居抜き売却にノウハウのある不動産会社に相談するようにしましょう。


③ 事業譲渡|店舗の「営業そのもの」を引き継ぐ

 居抜き売却よりも、さらに広い範囲を引き継ぐのが「事業譲渡」です。居抜き売却では、主に店舗の内装や設備といった「物」が中心になります。

 一方、事業譲渡では、

  • 店名
  • ブランド
  • レシピ
  • 営業ノウハウ
  • 顧客
  • 取引先
  • 店舗設備

 など、店舗を営業するためのさまざまな要素をまとめて引き継ぐことがあります。
 例えば、地域で長く営業していて常連客が多い店舗や、独自の商品・レシピに強みがある店舗であれば、「設備だけでなく、その店を営業すること自体」に価値が生まれる可能性があります。

 また、事業譲渡は会社そのものを売却する必要がない点も特徴です。

 複数店舗を運営している会社が、そのうちの1店舗だけを別の会社や事業者へ譲渡する、といったケースも考えられます。


④ M&A|会社や事業を引き継ぐ

 「M&A」という言葉を聞くと、大企業同士の買収をイメージする方もいるかもしれません。
 ですが、M&Aは「Mergers and Acquisitions」の略で、合併や買収など、会社や事業を引き継ぐ取引を広く指します。

 飲食店の場合も、必ずしも「1店舗を売る」だけとは限りません。

  • 複数店舗を運営する会社
  • 飲食ブランドを展開する会社
  • 独自の商品やブランドを持つ会社
  • 従業員や組織ごと事業を引き継いでほしいケース

 などでは、会社や事業そのものを引き継ぐM&Aが選択肢になることがあります。なお、M&Aにはさまざまな方法があり、先ほど紹介した「事業譲渡」もM&Aの一つです。

 そのため、「事業譲渡とM&Aは完全に別のもの」というよりも、事業譲渡などを含む広い概念がM&Aだと考えると分かりやすいでしょう。


「閉店=すべて失う」ではない

 飲食店を閉店するとき、「これまでかけてきた費用がすべて無駄になってしまう」と考えてしまう方もいるかもしれません。

 しかし、

  • 店舗の内装
  • 厨房設備
  • 立地
  • 店舗ブランド
  • レシピ
  • 営業ノウハウ
  • 常連客
  • 取引先との関係

 など、これまで営業してきたことで生まれた価値を、別の形で引き継げるケースもあります。特に賃貸店舗の場合、「建物を所有していないから何も売れない」とは限りません。

 むしろ、次の出店者から見れば、すでに営業できる状態になっていること自体が価値になる場合があります。


では、自分の店は何を売れる?

 ここまで紹介したように、「飲食店の売却」といっても、引き継ぐものによって方法は変わります。大まかに整理すると、

設備売却
→ 厨房機器など、設備そのものを売却
居抜き売却
→ 内装や設備など、店舗を営業できる状態で引き継ぐ
事業譲渡
→ 店舗設備だけでなく、ブランドや営業ノウハウなど事業そのものを引き継ぐ
M&A
→ 事業や会社など、より広い単位で引き継ぐ

 という違いがあります。
 そのため、閉店を考え始めたときには、「いくらで売れるだろう?」と考えるだけではなく、「自分の店には、どんな価値が残っているのか?」という視点で考えてみることも大切です。


まとめ|「店を売る」方法は、閉店理由や店舗の状況によって変わる

 飲食店を「売る」といっても、その方法は一つではありません。

 設備だけを売却する方法もあれば、内装や厨房設備を引き継ぐ居抜き売却、営業そのものを引き継ぐ事業譲渡、会社や事業を引き継ぐM&Aなどがあり、どの方法が適しているかは、店舗の規模や契約内容、設備の状態、ブランド力などによって変わります。

 また、閉店を決めてから売却方法を考えるのではなく、早めに「何を残せるのか」を確認しておくことで、選択肢が増える場合もあります。
 「閉店する=すべてを処分する」と決めつける前に、自分の店舗にどのような価値が残っているのか、一度整理してみてはいかがでしょうか。


◯会社概要
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