飲食店の居抜き物件とスケルトン物件を比較するイメージ

飲食店の造作譲渡契約書|締結前に確認すべき8項目と設備リストの作り方

飲食店を居抜きで売却するとき、価格だけを決めて造作譲渡契約書に署名すると、引渡し直前に「この冷蔵庫は譲渡対象外だった」「故障の修理代はどちらが負担するのか」「貸主の承諾が取れず話が進まない」といった行き違いが起こり得ます。

造作譲渡は、内装・厨房設備・什器などを次の運営者へ引き継ぐ取引です。売主にとっては撤去や原状回復の負担を抑えられる可能性があり、買主にとっては開業準備を短縮できる可能性があります。ただし、賃貸借契約や貸主・管理会社との調整とは別に、譲渡対象と責任範囲を具体的に決める必要があります。

この記事では、飲食店オーナーが造作譲渡契約書の締結前に確認したい8項目と、設備リストを作る実務手順を解説します。今日できる準備から始め、条件整理に迷ったら早めに専門家へ相談しましょう。

造作譲渡契約書とは何を決める書類か

造作譲渡契約書は、店舗内の内装・設備・什器などを「何を、どの状態で、いつ、いくらで引き渡すか」を売主と買主の間で明確にする書類です。店舗の賃貸借契約そのものを譲渡する書類ではありません。

民法第612条(e-Gov法令検索)では、賃借権の譲渡や転貸には原則として賃貸人の承諾が必要とされています。居抜きの取引でも、貸主・管理会社の承諾、新しい賃借人の審査、新賃貸借契約などが別途必要になるのが一般的です。造作の売買だけを先に確定せず、店舗の引継ぎ全体を一つの工程として管理することが重要です。

まず基礎から整理したい方は、造作譲渡の基礎知識・流れ・注意点もあわせてご覧ください。

造作譲渡契約書で確認すべき8項目

1.譲渡対象を「一式」で済ませず設備ごとに特定する

「店内造作一式」という表現だけでは、何が含まれるかを後から判断できません。厨房機器、空調、給排気、グリストラップ、照明、カウンター、椅子、食器、POS関連機器などを分類し、メーカー名・型番・数量・設置場所・所有者を記録します。

写真にも番号を付け、設備リストの番号と対応させると、現地確認時の認識差を減らせます。動かせない内装と、持ち運べる備品は分けて記載しましょう。

2.所有権が売主にあるかを確認する

店舗内にある設備でも、リース品、レンタル品、貸主の設備、ビール会社など取引先からの貸与品は売主が自由に譲渡できない場合があります。契約書、請求書、リース明細、固定資産台帳などを照合し、所有者が不明なものは譲渡対象から外すか、確認完了を条件にします。

3.設備の状態と故障・不具合を記録する

中古設備は、見た目だけでは稼働状態を判断できません。電源、温度、排水、異音、ガス接続、排気などを確認し、既知の不具合・補修歴・欠品を設備リストに記載します。

「現状有姿」での引渡しとする場合でも、その言葉だけに頼らず、売主が把握している不具合を具体的に共有することが大切です。引渡し前に再度動作確認を行い、確認日と立会者を残します。

4.譲渡代金・支払時期・返金条件をそろえる

譲渡代金の総額だけでなく、申込金や手付金の有無、残代金の支払日、振込手数料、消費税の扱い、領収書の発行方法を確認します。

特に重要なのは、貸主の承諾や新賃貸借契約が成立しなかった場合の扱いです。どの時点で契約が成立し、どの条件が満たされなければ白紙・解除・返金となるのかを曖昧にしないようにします。

5.貸主承諾と賃貸借契約を停止条件として整理する

買主候補が見つかっても、貸主の承諾や入居審査が完了するとは限りません。造作譲渡契約の効力を、新賃貸借契約の締結や貸主承諾の取得と連動させるのか、専門家を交えて整理します。

売主は、賃貸借契約書の「譲渡・転貸禁止」「原状回復」「解約予告」「指定業者」「違約金」などを先に確認し、貸主・管理会社へ相談する順番を決めておきましょう。

6.引渡日と店舗の状態を具体的に決める

鍵を渡す日だけでなく、営業終了日、食材・私物の撤去期限、清掃範囲、在庫の扱い、光熱水道の名義変更、設備の最終動作確認日を時系列で決めます。

引渡確認書を別紙で用意し、鍵の本数、メーター値、設備リスト、残置物の有無、写真を双方で確認できる形にすると実務が進めやすくなります。

7.原状回復義務が残る場合の負担者を決める

居抜きで引き渡せても、将来の退去時に原状回復義務を誰が負うかは賃貸借契約と貸主の承諾内容によって異なります。売主・買主間の造作譲渡契約だけで貸主に対する義務が自動的に移るとは限りません。

国土交通省の原状回復ガイドラインは主に民間賃貸住宅を対象とする資料です。事業用店舗では個別契約や特約の影響が大きいため、参考情報として扱い、実際の契約書を不動産会社・弁護士などに確認してください。店舗退去の考え方は、飲食店退去時の原状回復と居抜き売却でも解説しています。

8.解除・違約・紛争時の連絡方法を決める

どのような場合に解除できるか、設備が契約内容と違った場合の対応期限、違約金の有無、通知方法、協議先などを確認します。メールやチャットだけで重要条件を変更せず、合意内容は書面や電子契約に反映させましょう。

契約書のひな形をそのまま使うのではなく、店舗ごとの設備、賃貸借条件、引渡スケジュールに合わせて修正することが重要です。

設備リストの作り方|今日からできる5ステップ

ステップ1:店内を5つの区画に分ける

厨房、客席、バックヤード、トイレ、外部・看板のように区画を分け、左回りなど一定の順番で確認します。確認漏れを防ぐため、図面があれば書き込みながら進めます。

ステップ2:設備ごとに管理番号を付ける

「K-01 冷蔵庫」「H-03 テーブル」のように区画別の番号を付けます。写真ファイル名も同じ番号にすると、契約書の別紙と現物を照合しやすくなります。

ステップ3:8つの情報を記録する

  • 品名・用途
  • メーカー・型番
  • 数量
  • 設置場所
  • 所有者(自社・貸主・リース・貸与)
  • 購入時期または使用年数の目安
  • 稼働状態・既知の不具合
  • 譲渡対象か、撤去するか

ステップ4:動作確認と写真撮影を同日に行う

撮影日と確認日をそろえ、設備全体、型番ラベル、傷や不具合の3種類を撮影します。電気・ガス・水道を止める前に確認し、無理な分解や有資格作業が必要な確認は避けます。

ステップ5:買主候補との現地確認後に版を確定する

最初のリストを最終版とせず、現地確認で追加・除外・状態変更を反映します。契約書には「別紙設備リストの版番号・作成日」を記載し、双方が同じ版を保管します。

契約前日に使える最終チェックリスト

  • 貸主・管理会社へ相談する順番を確認した
  • 賃貸借契約の譲渡禁止、原状回復、解約予告を確認した
  • リース品・貸与品・貸主設備を分けた
  • 設備リストと写真の番号が一致している
  • 既知の故障・欠品を記載した
  • 代金、支払日、税の扱いを確認した
  • 貸主承諾や新賃貸借契約が不成立の場合を決めた
  • 引渡日、残置物、清掃、鍵の扱いを決めた
  • 原状回復義務の扱いを三者で確認した
  • 解除・違約・通知方法を確認した

造作譲渡を安全に進める順番

  1. 賃貸借契約書と解約予告期限を確認する
  2. 設備リストと写真を作る
  3. 売却条件と希望スケジュールを整理する
  4. 貸主・管理会社への相談方法を専門家と決める
  5. 買主候補の確認と条件調整を行う
  6. 貸主承諾・賃貸借契約・造作譲渡契約を連動させる
  7. 引渡確認書で現物と書類を照合する

価格交渉を進める際の考え方は、造作譲渡の売却価格と交渉のポイントも参考にしてください。

まとめ|契約書より先に「現物と条件」をそろえる

造作譲渡契約書で最も大切なのは、難しい文言を増やすことではなく、譲渡対象、設備状態、貸主承諾、代金、引渡し、原状回復の認識を揃えることです。設備リストと写真を先に作ると、査定や買主候補との打ち合わせも具体的になります。

店舗ごとに賃貸借条件や設備の所有関係は異なります。本記事は一般的な情報であり、個別案件への法的助言ではありません。契約締結前には、不動産会社、弁護士、税理士など必要な専門家へ確認してください。

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