常連客は飲食店の財産。でも「常連だけの店」になっていませんか?

 飲食店経営では、「常連客を大切にしましょう」とよく言われます。

 実際、何度も来店してくださるお客様は、お店にとってかけがえのない存在です。開業直後から支えてくださったり、口コミで新しいお客様を紹介してくださったりと、売上だけでは測れない価値をもたらしてくれます。

 そのため、「常連客が多いお店ほど経営は安定するのだろうか」「新規のお客様より常連客を優先した方が良いのだろうか」と考えたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

 今回は、飲食店経営における常連客との向き合い方と、新規のお客様とのバランスについて考えてみます。


常連客はお店を支える大切な存在

 常連客には、多くのメリットがあります。例えば、

  • 定期的に来店してくださる
  • お店を知人に紹介してくださる
  • お店の変化に気付いてくださる
  • 店内の雰囲気づくりに一役買ってくださる

 などです。
 特に開業したばかりの頃は、来客数が安定しないことも珍しくありません。そんな時期に繰り返し足を運んでくださるお客様は、経営面だけでなく精神的にも大きな支えになります。

 また、長年通ってくださる方がいるということは、それだけお店が支持されている証拠でもあります。


ただし、常連客に甘える経営にはリスクもある

 とはいえ、常連客が多いことと、お店の経営が安定していることは必ずしも同じではありません。どれだけ長く通ってくださるお客様でも、

  • 転勤
  • 引っ越し
  • 結婚・出産
  • 定年退職
  • ライフスタイルの変化

 などによって、来店頻度が変わることがあります。毎週来ていた方が、ある日を境に来られなくなることも珍しくありません。これはお店への評価が下がったからではなく、お客様の生活が変化した結果です。

 確かに、常連客がいることは大きな強みです。
 ただ、上記のようなケースがある以上、売上を特定のお客様に依存する状態は、経営としてのリスクも大きいです。

 だからこそ、常連客は大切にしながらも、新しいお客様との出会いを継続していくことも重要になります。
 お客様が自然に入れ替わり、新しい方が少しずつ常連になっていく。その循環を作ることが、お店の安定につながるのではないでしょうか。


常連客が増えることで生まれる課題

 常連客が増えること自体は喜ばしいことですが、その一方で、新たな課題が生まれることもあります。

お客様の声に偏りが出る

 常連のお客様は、お店への愛着があるからこそ率直な意見を伝えてくださいます。

 それ自体はとてもありがたいことですが、その声ばかりを聞いていると、新規のお客様やライトユーザーが感じていることが見えにくくなる場合があります。
 また、店主自身も知らず知らずのうちに、常連のお客様の意見を基準に考えてしまうこともあるでしょう。

お店の変化が難しくなる

 営業時間を変更したり、新メニューを導入したり、営業スタイルを見直したり……飲食店を続けていれば、変化が必要になる場面は少なくありません。

 しかし、常連のお客様が増えるほど、「前の方が良かった」という声も出やすくなります。

 もちろん、その声も大切です。ただ、お店を長く続けるためには、変わる勇気が必要な場面もあります。

店内の空気が閉じてしまう

 最も気を付けたいのが、お店の雰囲気です。例えば、

  • 店主と常連客だけで会話が盛り上がっている
  • 常連同士のコミュニティができている
  • 初めて来た人が入りづらい空気になっている

 こうした状態になると、新規のお客様は「自分は場違いなのでは」と居心地の悪さを感じてしまうことがあります。

 これは常連客が悪いという話ではありません。長く良い関係が築けているからこそ起こりやすい現象でもあります。
 だからこそ、「初めてのお客様からどう見えるか」「初めてのお客様はどう感じるか」という視点を持っておくことも大切です。


常連客を大切にすることと、身内ノリは違う

 常連客を大切にすることと、身内だけのお店になることは別の話です。

 例えば、

  • 初来店のお客様にも必ず一声かける
  • 店主が一人のお客様だけと長時間話し込まない
  • 店内全体に目を配る
  • 初めてのお客様にも居場所を作る

 こうした小さな配慮だけでも、お店の印象は大きく変わります。

 「誰でも入りやすいけれど、何度も来たくなる店」。そんな雰囲気を目指したいところです。


「特別扱い」より「覚えている」が嬉しいこともある

 常連サービスというと、値引きやサービス品、常連だけが頼める裏メニューなどを思い浮かべる方も多いかもしれません。
 もちろん、それも一つの方法です。

 しかし個人店では、

  • 名前を覚えている
  • 好みを覚えている
  • 前回の会話を覚えている
  • 久しぶりの来店に気付く

 こうした対応の方が嬉しいというお客様も少なくありません。

 「覚えていてくれた」という体験は、チェーン店ではなかなか得られない、個人店ならではの価値です。


常連サービスは「仕組み化」する方法もある

 常連のお客様への感謝を形にしたい場合は、サービスを制度として用意する方法もあります。

 例えば、

  • スタンプカード
  • 会員制度
  • 来店回数特典
  • 限定イベント
  • 会員限定メニュー

 などです。
 ここでのポイントは、「特定の人だけを特別扱いする」のではなく、「誰でも条件を満たせば利用できる仕組み」にすることです。

 これなら新規のお客様も、「通えば自分も利用できるんだ」と感じやすく、不公平感も生まれにくくなります。


新しいお客様との出会いを止めない

 立地によっては自然と新規客が来るお店もあります。しかし一方で、住宅街や路地裏などでは、知ってもらう機会そのものが少ないこともあります。

 その場合は、

  • SNSでの発信
  • 地域イベントへの参加
  • 商店街の催し
  • 他店舗とのコラボ

 などを通じて、お店を知ってもらうきっかけを作ることも大切です。

 常連客を大切にすることと、新しいお客様との出会いを作ることは、決して矛盾しません。むしろ、その両方があることで、お店は長く続いていきます。


まとめ

 常連客は、お店にとって大切な財産です。
 しかし、常連客だけに頼る経営では、お客様の生活環境の変化によって売上が左右される可能性もあります。また、常連客との良好な関係が、新規のお客様にとって入りづらい空気を生んでしまうこともあります。

 だからこそ大切なのは、

  • 常連客を大切にすること
  • 新しいお客様を歓迎すること
  • 誰でも常連になれるお店を目指すこと

 この3つです。

 長く愛されるお店は、「常連だけのお店」ではなく、「初めて来た人も、また来たくなるお店」。
 そんな視点でお店づくりを考えてみるのも、一つのヒントになるのではないでしょうか。


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