居抜き売却の名義変更料とは?誰が払うか・確認手順
居抜き売却で名義変更料を求められたら、すぐ支払うのではなく、請求者・根拠条項・対象手続・負担者・支払時期・不成立時の返金を確認します。金額に法定の一律基準はないため、造作譲渡代金とは分け、最終的な手残りと期限への影響でまず判断してください。
「買い手が見つかったのに、貸主や管理会社から名義変更料・名義書換料・承諾料を求められた」というときは、名称だけで判断しないことが重要です。同じ呼び方でも、貸主の承諾、新しい賃貸借契約、管理会社の事務、保証会社の再審査など、対象が異なる場合があります。
この記事では、賃貸店舗を居抜きで譲渡する飲食店オーナー向けに、請求を受けた日に確認する順番、売主と買主の負担の決め方、手残りの見直し、書面に残す項目を解説します。個別契約の法的・税務上の結論は、契約書を確認できる専門家へご相談ください。
結論|名義変更料は「誰が・何のために・いつ払うか」を分ける
居抜き売却の名義変更料について、法律で全国一律の金額や売主負担が定められているわけではありません。まず、現在の賃貸借契約を買い手へそのまま移すのか、現契約を終了して買い手が新しい契約を結ぶのかを確認します。
次に、請求書や条件提示を次の六つに分けてください。
- 請求者:貸主、管理会社、仲介会社、保証会社の誰か
- 根拠:賃貸借契約書、覚書、募集条件、個別合意のどこか
- 対象:承諾、契約変更、新規契約、審査、事務のどれか
- 負担者:売主、買主、折半のどれか
- 支払時期:申込時、承諾時、契約時、引渡時のどこか
- 不成立時:審査否決や契約中止なら返金されるか
この六つが不明なまま造作譲渡代金だけを決めると、後から追加費用が判明し、値下げ交渉や契約延期につながりやすくなります。
名義変更料・承諾料・契約費用は同じとは限らない
貸主への名義変更料・承諾料
賃借人の変更や賃借権の譲渡について貸主の承諾を得る条件として示される費用です。契約書に金額や算定方法が記載されている場合もあれば、居抜き売却の相談後に個別条件として提示される場合もあります。
管理会社・仲介会社の契約事務費用
書類作成、条件調整、新しい契約の締結などに関する費用として示されることがあります。貸主へ支払う承諾料とは受取人や役務が異なる可能性があるため、「名義変更一式」でまとめず、項目別の明細を依頼してください。
買い手側の新規契約費用
買い手が新しい賃貸借契約を結ぶ場合は、保証金、礼金、仲介手数料、保証会社の費用、保険料などが別に必要になることがあります。これらを売主の名義変更料と混ぜると、誰の支出か分からなくなります。
造作譲渡代金
内装・厨房設備・什器などの譲渡対価です。貸主や管理会社に払う費用ではありません。造作譲渡代金の確認は、造作譲渡契約書と設備リストの作り方も参考にしてください。
なぜ貸主の承諾確認が先なのか
e-Gov法令検索「民法」第612条は、賃借人が賃借権を譲渡したり賃借物を転貸したりする場合、賃貸人の承諾を得ることを定めています。ただし、居抜き売却では、賃借権の譲渡ではなく、現契約を終了し、買い手が貸主と新規契約を結ぶ進め方もあります。
そのため、「居抜き売却だから必ず同じ名義変更手続になる」とは限りません。造作の売買、現契約の終了、買い手の入居審査、新契約の成立を別々に確認し、どの成立条件に費用が付いているのかを明確にします。
買い手発見後の全体工程は、居抜き売却で買い手が見つかった後の流れで確認できます。
名義変更料を提示された日の7ステップ
1.最新版の契約書と覚書をそろえる
入居時の契約書だけでなく、更新契約、賃料改定、保証会社、工事承認、特約の覚書も確認します。契約書が見つからない場合は、管理会社へ写しと現行条件の確認方法を尋ねてください。
2.現契約終了か名義変更かを確認する
「名義変更」という呼び方でも、実際には買い手との新規契約である場合があります。現契約の解約日、保証金の精算、原状回復義務、買い手の契約開始日がどうなるかを一枚に並べます。
3.請求項目を一行ずつ分ける
口頭の合計額ではなく、受取人、名目、税込・税抜、支払期限、返金条件を記載した書面を依頼します。税の扱いは、費用の名目だけでなく、土地・建物・役務の何に対する支払いかで異なることがあります。
国税庁の「地代、家賃や権利金、敷金など」では、土地の賃借権に伴う名義書換料と、事業用建物の賃貸借に伴う返還しない権利金等を区別しています。自店の請求がどれに当たるかは、請求書と契約内容を税理士等へ確認してください。
4.買い手審査との前後関係を確認する
買い手の入居審査前に支払うのか、貸主の承諾・新契約成立後に支払うのかでリスクが変わります。審査に通らない場合、別候補へ切り替える場合、売却自体を中止する場合の返金条件も確認します。
5.売主・買主の負担を造作契約へ反映する
売主が払うと決めつけず、買主負担、折半、造作譲渡代金との調整を含めて合意します。誰が負担するかは貸主・管理会社の請求条件にも左右されるため、当事者間だけで決めて終わりにしないでください。
6.手残りを再計算する
査定額や造作譲渡代金から、名義変更料だけを引くのでは不十分です。次の支出と回収を同じ時点で見直します。
- 名義変更料・承諾料・契約事務費用
- 解約日または引渡日までの賃料・共益費
- 原状回復、撤去、処分、清掃の費用
- 仲介・契約関連の費用
- 造作譲渡代金・設備売却代金
- 保証金・敷金の返還見込みと返還時期
比較方法は、居抜き売却の費用と手数料と閉店見積の比較方法で詳しく整理しています。
7.三つの成立条件を同じ書面で管理する
少なくとも「貸主の承諾」「買い手の入居審査と新契約」「造作譲渡契約」を一つの工程表に置きます。一つだけ成立した状態で代金や鍵を先に動かさないよう、支払日、契約日、引渡日、不成立時の扱いをそろえてください。
売主と買主のどちらが払うかを決める三つの視点
請求書上の支払義務者
貸主・管理会社が誰に請求する条件なのかを確認します。当事者間で買主負担と合意しても、請求書上は売主に支払義務が残る場合、未払い時の責任まで消えるとは限りません。
費用によって利益を受ける場面
売主は原状回復を避けて退去できる可能性があり、買主は内装や設備を引き継いで出店準備を進められる可能性があります。どちらか一方だけの利益と決めつけず、譲渡価格、残置範囲、引渡期限と合わせて交渉します。
破談時の損失を負える側
入居審査、貸主承諾、新契約のどこで不成立になる可能性があるかを確認し、支払いを先行させる側が返金条件を確保できるかを見ます。金額だけでなく、リスクを引き受ける条件として判断してください。
書面で確認するチェックリスト
- 費用の正式名称と対象手続
- 請求者・受取人・請求書の発行者
- 契約書または覚書の根拠条項
- 金額、算定方法、税込・税抜の表示
- 売主・買主の負担割合
- 支払日と貸主承諾・審査・契約成立の前後関係
- 不成立、中止、別候補への変更時の返金条件
- 保証金・敷金の精算と返還先
- 原状回復義務が免除または変更される範囲
- 現契約終了日、新契約開始日、鍵と造作の引渡日
国税庁の「不動産の使用料等の支払調書の提出範囲等」でも、借家権を譲り受けた場合に家主へ支払う名義書換料が例示されています。ただし、支払調書の提出要否や経理処理は支払先・金額・契約形態で異なるため、この記事だけで判断せず税理士等へ確認してください。
名義変更料を理由に居抜き売却を諦める前に比較すること
追加費用が示されたら、「払うか、売却をやめるか」の二択にしないでください。次の三案を、期限と手残りで比較します。
- 居抜き売却を進める:費用を含めても原状回復・空家賃より手残りが良いか
- 条件を調整する:負担割合、譲渡価格、引渡日、残置範囲を変更できるか
- 通常退去へ切り替える:原状回復の発注期限と工期に間に合うか
賃貸借契約の満了や解約期限が近い場合は、満了前に閉店するときの違約金と居抜きの確認も併せて確認してください。
よくある質問
名義変更料には決まった相場がありますか?
法律で全国一律の金額は定められていません。契約条項、貸主条件、変更か新規契約か、対象手続によって異なります。相場だけで妥当性を決めず、算定根拠と代替案を確認してください。
貸主の承諾前に買い手と造作譲渡契約を結べますか?
契約の可否や効力は個別条件によります。少なくとも貸主承諾や新賃貸借契約が成立しない場合の解除、返金、原状回復、設備の扱いを明記し、必要に応じて弁護士などへ確認してください。
名義変更料を払えば居抜き売却は確定しますか?
確定するとは限りません。貸主承諾、買い手の入居審査、新しい賃貸借契約、造作譲渡契約、設備の所有確認など、別の条件が残る場合があります。
まとめ|請求額ではなく手続と手残りを確認する
居抜き売却の名義変更料は、名称だけでは内容も負担者も判断できません。請求者、根拠、対象手続、支払時期、不成立時の返金を分け、造作譲渡代金、家賃、原状回復、保証金精算まで含めて手残りを見直してください。
貸主・管理会社から条件を提示された段階なら、設備撤去や原状回復工事を始める前に選択肢を比較できます。店舗の所在地、契約名義、解約期限、提示された費用、買い手候補の有無を分かる範囲で整理し、飲食店の閉店・居抜き売却の無料相談をご利用ください。相談時点で名義変更料の支払い可否や売却成立を保証するものではありませんが、契約・設備・期限を同じ順番で確認できます。
※本記事は2026年10月9日時点の一般的な情報です。契約の解釈、請求の有効性、税務処理は個別事情で異なります。重要な判断は、貸主・管理会社、弁護士、税理士など適切な専門家へご確認ください。
