飲食店閉店時の保証金・敷金はいくら戻る?償却と控除の確認手順
飲食店を閉店するとき、預けた保証金・敷金がそのまま全額戻るとは限りません。返還見込み額を知るには、契約書の「預けた金額」「償却の条件」「控除される債務」「返還時期」を分けて確認します。居抜き売却で造作を譲渡する場合も、売却代金と保証金の精算は別の取引です。
閉店費用を見積もるときは、返還予定額を手元の現金として先取りしないことが重要です。以下は飲食店オーナーが貸主・管理会社と話す前に用意できる、確認手順と精算表です。個別の返還義務・控除の可否は契約内容や事情で異なるため、争いがある場合は専門家へ相談してください。
まず確認:保証金・敷金の返還見込み額は4項目で整理する
実務上の見込み額は、預け入れ総額から契約上の償却額と、精算対象になる未払債務等を差し引いた残額を起点に整理します。ただし、何をいくら差し引けるかは自動的に決まるわけではありません。契約書、請求根拠、明渡し時の状態を照合してください。
| 項目 | 確認する書類・事実 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 預入額 | 賃貸借契約書、領収書、送金記録 | 更新や増額時の追加預託を含めた総額 |
| 償却・敷引き | 契約書の特約、更新覚書 | 「賃料の何か月分」などの計算基準と改定後賃料 |
| 控除候補 | 賃料・共益費の明細、工事見積、退去立会い記録 | 未払分と請求予定分を混同しない |
| 返還時期 | 返還条項、明渡し予定日、精算書 | 営業終了日と鍵の返却日が異なること |
契約上「保証金」と呼んでいても、その金銭が何を担保する目的で預けられたかを確認します。e-Gov法令検索「民法」第622条の2は、敷金の名称を問わない定義と返還に関する基本的な規定を置いています。店舗の契約では、償却や返還手続の特約、締結時期など個別事情を別途確認する必要があります。
契約書で探すべき6つの箇所
1.保証金・敷金の金額と追加預託の履歴
契約書の最初の金額だけでなく、賃料改定、更新、保証金の追加預託、途中返還の有無を確認します。通帳の送金記録と領収書を照合し、「現在いくら預けているか」を一行で示せるようにしてください。消費税の扱いを含む請求書や会計処理の疑問は税理士に確認しましょう。
2.償却・敷引きの条件
「保証金の何%」「賃料の何か月分」「解約時に定額」など、契約書に書かれた計算方法をそのまま転記します。途中解約の場合と契約満了の場合で扱いが違うか、更新後の覚書で条項が変わっていないかも見ます。償却と原状回復費を一括りにせず、別々の欄で整理してください。
3.解約予告と明渡しまでの賃料
営業を終えた日からすぐ賃料が止まるとは限りません。解約通知日、契約終了日、鍵の返却・明渡し日を並べ、賃料と共益費がどの期間まで発生するか確認します。閉店後の賃料がいつまで発生するかも、保証金の精算とは別に把握しておきましょう。
4.原状回復の範囲と工事負担
厨房の排気・給排水、壁・床、看板、電気設備、追加工事など、契約上どこまで戻す必要があるか確認します。「スケルトン戻し」と書かれていても、対象範囲や貸主の承諾を口頭だけで決めないでください。工事費を差し引く見込みなら、対象、数量、単価、施工範囲が分かる明細を求めます。原状回復費用の見積もり比較も参考にしてください。
5.違約金・未払金・その他の控除
中途解約違約金、未払賃料、共益費、未精算の水道光熱費など、請求名目ごとに契約上の根拠と計算期間を確認します。同じ費用が工事費と違約金に重複していないかも見ます。内訳が不明な「一式」の控除は、具体的な明細と根拠を照会しましょう。
6.返還日・返還先・精算の連絡方法
契約書に返還期日の定めがあるか、明渡し後にどのような精算書が届くかを確認します。返還口座、担当窓口、精算書の送付先、疑問点への回答期限を記録してください。返還予定を原状回復工事や次の出店の支払いに充てる場合は、入金日が確定するまで資金繰りに余裕を持たせます。
返還見込みを「未確定」として管理する精算表
以下は計算のための記入例です。金額は実績ではなく、項目の並べ方を示す仮の数字です。
| 項目 | 仮の金額 | 確定に必要な確認 |
|---|---|---|
| 預入保証金・敷金 | +300万円 | 契約書・送金記録 |
| 契約上の償却 | -60万円 | 償却条項・基準賃料 |
| 未払賃料等 | -20万円 | 請求対象月と支払履歴 |
| 原状回復費用 | 未確定 | 契約範囲・立会い・見積明細 |
| 仮の残額 | 220万円から未確定費用を控除 | 精算書と貸主回答 |
この表の「220万円」は受取額の確約ではありません。賃料や工事範囲、その他の債務によって変わります。返還見込みを一つの数字で伝える必要があるときも、「確定済み」「見積段階」「争点あり」を分けて示すと、資金計画の誤りを防げます。
居抜き売却の場合、保証金の精算はどう考える?
造作や厨房設備の譲渡価格と、貸主に預けている保証金・敷金は別々に管理します。後継テナントの審査が通ることと、現在の借主の保証金がいくら戻ることも同義ではありません。
貸主が居抜き引渡しを認める場合は、残す設備、撤去する設備、原状回復の免除・変更範囲、現契約の終了日、新契約の開始日、保証金の精算方法を文書で確認します。後継テナントへの「保証金の引継ぎ」を当然の前提にせず、貸主・売主・買い手のそれぞれが何を負担するかを整理してください。買い手発見後の手続きは貸主審査から引渡しまでの流れで解説しています。
退去前から精算までのチェックリスト
- 契約書・更新覚書・保証金の送金記録を一式そろえる
- 解約通知日、契約終了日、明渡し日を別々に記入する
- 償却条項、違約金、返還時期を原文のまま抜き出す
- 貸主と原状回復・居抜き残置の範囲を文書で確認する
- 退去立会いでは設備状態・残置物・鍵・メーターを写真と書面で残す
- 精算書を受け取り、控除項目ごとに契約条項・見積明細・支払履歴を照合する
- 不明な控除は窓口へ書面で質問し、回答と修正履歴を保存する
退去当日の確認項目は店舗明け渡しのチェックリストも併せてご覧ください。
よくある質問
店舗の保証金・敷金の償却分に消費税はかかりますか?
国税庁「No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など」によると、事業用建物の賃貸借で返還されない保証金・敷金の部分は課税対象となり、契約終了時に返還される部分は課税対象になりません(2026年10月2日確認)。契約書の「償却」「敷引き」の金額・確定時期を確認し、精算書や会計処理の判断は税理士へ確認してください。
閉店した日に保証金を返してもらえますか?
営業終了日だけでは判断できません。賃貸借の終了、明渡し、契約上の返還条件、未払債務の精算を確認します。返還時期は契約書と貸主・管理会社への確認が必要です。
居抜きで売れたら原状回復費用は必ずゼロになりますか?
いいえ。貸主が認めた残置範囲、譲渡対象外の設備、買い手の入居審査、引渡し条件によって負担が残る場合があります。「現状のまま」といった口頭の表現だけで判断せず、条件を文書にしてください。
精算書の控除額に納得できないときは?
まず控除名目、契約条項、数量・単価、立会い記録の提示を求め、どこに相違があるか具体的に伝えます。個別契約の有効性や法的な争点は、必要に応じて弁護士などへ相談してください。国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドラインは民間賃貸住宅向けの資料であり、飲食店の事業用賃貸借にそのまま当てはめられるものではありません。
まとめ:返還額ではなく「根拠と入金時期」を先に確認
保証金・敷金の精算は、預入額、契約上の償却、未払債務、原状回復、返還時期を別々に把握すると見通しが立ちます。閉店費用と居抜き売却の手残りを比較する際も、未確定の返還額を現金として計上せず、貸主回答と精算書で更新してください。
閉店期限が迫っている、居抜きで残せる設備と原状回復範囲が決まらない場合は、契約書と希望時期を整理したうえで飲食店の閉店・居抜き売却を無料相談することができます。相談だけで保証金の返還額を確定できるものではありませんが、店舗売却と退去の選択肢を同じ日程で検討できます。
法令確認日:2026年9月23日。この記事は一般的な確認手順であり、個別契約の法的・税務上の助言ではありません。契約締結時期や特約、物件の状態によって結論は異なります。
