飲食店の移転で二重家賃が発生するとき|旧店舗の居抜き売却と期限の決め方
飲食店を移転するとき、旧店舗の家賃と新店舗の家賃が重なる期間を「居抜きで売れたらなくなる」と見込むのは危険です。解約予告、明渡し、後継テナントの審査、新店舗の賃料開始日は別々に決まります。先に日付と資金の表を作り、売却が成立する場合・しない場合の両方を比較しましょう。
この記事は移転先を探す一般的なガイドではありません。移転先探しの逆算を終えたオーナーが、旧店舗を居抜きで手放す際の「二重家賃と退去期限」に絞った実行用の整理です。
二重家賃を数える前に、四つの日付を別欄にする
| 日付 | どの書類で確かめるか | 未確定なら誰に聞くか |
|---|---|---|
| 新店舗の賃料開始日 | 新しい賃貸借契約・申込条件 | 新店舗の貸主・仲介会社 |
| 旧店舗の解約通知日と契約終了日 | 現契約の解約予告条項・通知控え | 現店舗の貸主・管理会社 |
| 旧店舗の明渡日と原状回復期限 | 現契約・退去条件の合意書 | 貸主・管理会社・工事業者 |
| 後継者への引渡予定日 | 造作譲渡条件・貸主審査の進捗 | 買い手候補・貸主・売却担当 |
新店舗の「開店予定日」は賃料開始日と同じとは限りません。内装工事・保健所手続き・試運転の前から賃料が始まる契約もあります。旧店舗も営業終了日と契約終了日が一致するとは限りません。解約通知の確認箇所と閉店後の賃料が続く条件を、契約書の実際の条項に当てはめてください。
居抜き売却が決まっても、旧契約が自動で終わるわけではない
造作・厨房設備の売買と、旧店舗の賃貸借契約の終了、後継者の新規賃貸借契約は別の話です。買い手候補が価格に同意しただけで旧契約の賃料を予算から消さないでください。後継者の入居審査、貸主の承諾、旧契約の終了日と原状回復の扱いを書面で確認して、はじめて確定条件へ移します。
現契約の賃借権をそのまま譲渡・転貸する場合は、民法612条(e-Gov法令検索)の賃貸人承諾の規定も関わります。現契約を終えて後継者が貸主と新契約を結ぶ方式とは手続きが違います。どちらの方式かを契約書と管理会社に確認し、「買い手が決まれば家賃は必ず止まる」と約束しないことが重要です。
売却成立・遅延・不成立の三つの資金表を作る
次の表は金額の相場ではなく、自店の数字を入れるための枠です。月ごとの支払い日で並べ、確定と未確定を分けます。
| シナリオ | 旧店舗側で残る支出 | 未確定の入金 | 確認してから判断すること |
|---|---|---|---|
| A:予定どおり成立 | 書面で合意した旧契約終了日までの賃料・譲渡費用 | 譲渡代金・保証金返還 | 貸主承諾、新契約、決済・明渡日 |
| B:審査・契約が遅延 | 延長中の賃料、維持費、必要なら工事待機費 | 譲渡代金の入金日が後ろへずれる | いつまで待ち、いつ代替案へ切り替えるか |
| C:売却不成立 | 契約どおりの賃料、原状回復・搬出・処分費 | 譲渡代金は計上しない | 工事見積と明渡期限、資金不足日 |
新店舗の賃料・工事代・人件費は、どのシナリオにも別欄で加えます。表の最後に「当月末現預金」「翌月の確定支払」「未確定の入金」「資金が不足する最初の日」を置くと、売却代金の期待額だけに引っ張られません。書式に迷うときは日本政策金融公庫の資金繰り表・記入例も参考にできます。
移転の工程を止めないための三つの判断点
新店舗の契約前:最長の重複期間を資金で耐えられるか
旧店舗の売却が未確定なら、シナリオCでも支払えるかを確認します。「売れたら払える」状態なら、新店舗の契約や工事日程の条件を慎重に比較し、必要に応じて資金調達先・専門家にも早めに相談します。保証金返還も精算・返還日が確定するまで手元資金に算入しません。
旧店舗の募集前:貸主へ何を確認するか
居抜きでの募集可否、後継者の業態・営業時間、造作を残せる範囲、旧契約の終了と原状回復の扱いを質問します。承諾を得る前に「そのまま引渡せる」と募集したり、買い手へ日付を確約したりしないでください。貸主相談後の流れは買い手候補が見つかった後の工程にも整理しています。
買い手候補が現れた後:切替期限を決める
「審査の回答予定日」「譲渡契約の期限」「原状回復工事を発注できる最終日」を一枚に書き、遅れた場合の代替候補、価格条件の見直し、工事見積のいずれへ切り替えるか決めます。買い手が見つからないときの見直しは居抜き売却が進まない原因と期限別の対応も参照してください。
よくある質問
後継テナントがすぐ入れば、解約予告期間中の家賃は不要ですか?
必ず不要になるとは言えません。旧契約の条項と貸主との合意内容、実際の終了日で変わります。口頭の見込みではなく、賃料最終日・精算方法を確認できる書面を求めます。
移転先の契約を先に結んでから旧店舗を売りに出せますか?
可能性はありますが、旧店舗が予定どおり売れない場合も両店の費用を負担できるかが判断点です。貸主の募集可否と新店舗の賃料開始日を先に確認し、売却予定額は未確定として資金表を作ってください。
まだ旧店舗を営業中でも相談できますか?
営業を続けながら、契約条項、設備の所有・状態、移転希望日を整理できます。情報の公開範囲やスタッフへの伝え方は、営業中の居抜き売却も参考にしてください。
旧店舗の出口を決めてから、新店舗の資金を読む
二重家賃の負担を下げるには、譲渡額だけでなく、旧契約の最終支払日と原状回復の有無を一緒に見る必要があります。旧店舗の契約書、設備リスト、新店舗の賃料開始日、希望移転日が分かれば、店舗高値買取センターの撤退・居抜き売却相談で旧店舗の選択肢を整理できます。貸主の承諾、売却成立、賃料減免を保証するものではありません。
出典:e-Gov法令検索「民法」(612条)、日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード」。2026年10月7日確認。賃料・原状回復・契約方式は個別契約により異なります。
