造作譲渡代金に消費税はかかる?居抜き売却前の確認手順
造作譲渡代金は、売主が課税事業者で、飲食店の内装・厨房設備などの事業用資産を有償で譲渡する場合、原則として消費税の課税対象です。契約前に、課税区分、税込・税抜、保証金、インボイスを確認します。契約書と請求書の表記をそろえる手順も解説します。
居抜き売却では、査定額だけを見て契約を進めると、「提示額は税込だったのか」「請求書に何を記載するのか」「返還される保証金まで造作代金に含めていないか」が後から問題になりかねません。契約前に、税務上の結論そのものではなく、税理士へ確認できる材料をそろえることが大切です。
この記事では、飲食店を居抜きで売却するオーナー向けに、造作譲渡代金の消費税を確認する順番、契約書・請求書でそろえたい項目、買い手へ渡す資料を実務の流れで解説します。
この記事は一般的な情報提供を目的としています。課税事業者・免税事業者の判定、課税区分、申告方法は個別事情で変わるため、契約締結前に税理士または所轄税務署へ確認してください。
造作譲渡代金の消費税は「売主」と「譲渡対象」を分けて確認する
国税庁は、課税事業者が事業用資産を譲渡した場合、事業に付随して対価を得て行う資産の譲渡として消費税等が課税されると説明しています。厨房機器や什器、事業用の内装設備などを有償で譲渡する取引は、まずこの考え方に当てはまるかを確認します。
ただし、「居抜き売却で受け取るお金」をすべて同じ区分にしないことが重要です。造作・設備の代金、返還される保証金・敷金、仲介会社へ支払う費用、解約日までの賃料は、それぞれ性質が異なります。
- 売主の確認:法人か個人事業者か、課税事業者か免税事業者か、適格請求書発行事業者の登録があるか
- 譲渡対象の確認:内装、厨房機器、空調、什器、備品など、何の対価として受け取る金額か
- 別取引の確認:保証金・敷金の返還、賃料、手数料、原状回復費などが混在していないか
造作譲渡料の決まり方から整理したい場合は、飲食店の造作譲渡料と手残りの考え方も確認してください。
契約前に確認する6つの項目
1.売主の事業者区分
最初に、売主となる名義を確認します。店舗の賃貸借契約名義と、造作・設備を所有する名義が同じとは限りません。法人名義の設備を代表者個人が売る、個人名義の設備を法人の資産として扱う、といった食い違いを避けるため、固定資産台帳、購入時の請求書、通帳の支払記録を照合します。
国税庁の説明では、課税事業者が事業用資産を譲渡する場合と、免税事業者や事業者でない者が資産を譲渡する場合で消費税等の扱いが分かれます。閉店するから自動的に免税になるわけではありません。売却する課税期間の状況を確認してください。
2.譲渡対象と所有者
造作譲渡契約書の「造作一式」だけでは、消費税の確認に必要な取引内容も、引渡し対象も明確になりません。設備一覧を作り、少なくとも次の区分を付けます。
- 売主が購入し、譲渡できる内装・厨房機器・什器
- リース会社やレンタル会社が所有する機器
- 貸主の設備
- 飲料会社など取引先からの貸与品
- 買い手へ譲らず、売主が撤去する私物・在庫
売主に所有権がない物を代金の対象へ含めないため、厨房機器の所有者・リース品・貸与品の確認手順も併用してください。
3.提示価格が税込か税抜か
査定書、買付申込、造作譲渡契約書、請求書で、同じ金額でも意味がずれていることがあります。金額を合意するときは、次の4点を一続きで記録します。
- 税抜の譲渡代金
- 適用する税率
- 消費税額等
- 税込の支払総額
「譲渡代金○円」の一行だけで済ませず、どの金額を基準に交渉したのかを明確にします。造作譲渡価格の決め方は、査定額と希望額を整理する方法をご覧ください。
4.保証金・敷金など別の入出金
造作譲渡代金と、貸主から返還される保証金・敷金は別に整理します。国税庁は、契約終了により返還される保証金や敷金は資産の譲渡等の対価に該当しないと説明しています。一方、返還されない部分や権利金などは、契約内容によって扱いが異なります。
造作代金に保証金の返還見込みを足して「売却収入」と一括表示すると、契約相手、支払日、課税区分が見えなくなります。入金先ごとに行を分けた資金予定表を作ってください。
5.インボイスの登録状況と書類
売主が適格請求書発行事業者で、買い手から適格請求書を求められる場合は、登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとの対価と消費税額、相手方の名称などの記載事項を確認します。国税庁は、必要事項が記載されていれば、書類の名称や形式は一つに限定されないと案内しています。
登録していない事業者が、登録番号を記載した適格請求書を発行することはできません。登録の有無と価格交渉は別の問題として扱い、買い手との認識を契約前にそろえます。
6.契約不成立・価格変更時の直し方
貸主の承諾、新しい賃貸借契約、設備の動作確認によって、譲渡対象や金額が変わることがあります。変更が生じたら、口頭合意だけで済ませず、契約書、設備一覧、請求書、振込額を同じ内容へ更新します。
貸主審査が通らない場合の解除・返金条件や、対象設備が減った場合の代金調整は、造作譲渡契約書の確認項目で整理できます。
造作譲渡代金と混ぜない3つのお金
返還される保証金・敷金
貸主から売主へ返還される金額です。買い手が造作の対価として支払う金額ではありません。償却や未払賃料、原状回復費の控除がある場合は、返還予定額と確定額を分けます。
仲介・契約・撤去などの費用
受け取る造作譲渡代金と、売却のために支払う手数料や撤去費は分けて記録します。「手取り額だけ」を契約書へ書くと、代金と費用の内訳が分からなくなります。居抜き売却で発生する費用・手数料で発生条件を確認してください。
賃料・共益費・光熱費
営業終了後も、明渡しや解約日まで賃料等が続く場合があります。これらは造作譲渡代金から自動的に相殺されるものではありません。誰に、いつまで、何の名目で支払うかを別に管理します。
契約前に行う5ステップ
ステップ1:30分で資料を集める
直近の消費税申告書、適格請求書発行事業者の登録通知、固定資産台帳、購入時の請求書、リース・レンタル契約書を集めます。見つからない資料は、顧問税理士、経理担当、リース会社へ照会します。
ステップ2:設備一覧へ所有者を記入する
設備名、メーカー・型番、設置場所、所有者、譲渡するか、既知の不具合を記入します。写真にも同じ番号を付けると、契約書の別紙として使いやすくなります。
ステップ3:入出金を相手別に分ける
買い手から受け取る造作譲渡代金、貸主から返還される保証金、仲介会社へ支払う費用、解約日までの賃料を別々に記載します。入金予定日と支払予定日も付け、資金繰りと税務確認を同じ資料で行えるようにします。
ステップ4:契約書と請求書の表記をそろえる
売主・買主の正式名称、譲渡対象、税抜額、税率、消費税額、税込総額、支払日、引渡日を照合します。インボイスを発行する場合は、国税庁が示す記載事項を確認します。
ステップ5:署名前に個別判断を確認する
課税事業者・免税事業者の判定、設備ごとの所得区分、帳簿価額、経理方法は個別事情で変わります。契約書案、設備一覧、入出金予定表を税理士へ渡し、署名前に確認します。契約条項の法的判断が必要な場合は弁護士などの専門家へ相談してください。
税理士や買い手へ渡す確認資料
- 造作譲渡契約書の案
- 譲渡設備一覧と写真
- 固定資産台帳と購入時の請求書
- リース・レンタル・貸与品の契約書
- 売主の課税事業者・免税事業者の確認資料
- 適格請求書発行事業者の登録状況
- 査定書、買付申込、請求書の案
- 保証金返還、手数料、賃料を分けた入出金予定表
資料がそろっていない場合でも、何が不足しているかを一覧にすれば、売却相談と税務確認を並行できます。
よくある質問
閉店する店舗の設備なら消費税はかかりませんか?
閉店することだけで決まりません。国税庁は、課税事業者が事業用資産を譲渡する場合は消費税等が課税されると説明しています。売主の区分と譲渡対象を確認してください。
免税事業者でも契約書に消費税額を書けばよいですか?
国税庁は、免税事業者が資産を譲渡する場合には消費税等は課税されず、譲渡価額に消費税等の額は含まれないと説明しています。価格表示、請求書、経理処理を自己判断で決めず、税理士等へ確認してください。
造作譲渡契約書だけでインボイスになりますか?
書類の名称ではなく、必要な記載事項がそろっているかで確認します。契約書と請求書など複数の書類を合わせて要件を満たす扱いもあり得るため、登録状況と保存書類を経理担当・税理士へ確認してください。
保証金の返還額にも同じ消費税をかけますか?
契約終了により返還される保証金・敷金は、造作譲渡代金とは分けます。返還されない部分や他の名目がある場合は契約内容で扱いが変わるため、貸主の精算書を確認してください。
売却価格を決めてから税理士へ相談しても間に合いますか?
価格合意後に税込・税抜の認識が違うと、手残りや買い手の支払総額が変わる可能性があります。少なくとも契約書へ署名する前に、価格の表示と売主の区分を確認するのが安全です。
造作譲渡の金額と引渡し条件を同時に整理する
消費税だけを切り離して考えるより、譲渡できる設備、貸主承諾、引渡し期限、売却費用を一つの資料にまとめると、買い手との条件調整が進めやすくなります。設備を処分したり、原状回復工事を発注したりする前に、現在の契約と設備一覧を用意してください。
店舗高値買取センターでは、譲渡対象、設備の所有関係、引渡し希望時期を整理し、相談時に確認すべき条件をご案内します。税額計算や申告の代理は行わないため、税務上の最終判断は税理士等へご確認ください。
公的な確認先
内容確認日:2026年10月8日。税制・制度は改正されることがあります。最新情報は国税庁、所轄税務署、税理士へご確認ください。
